著者
尾崎 るみ
出版者
白百合女子大学児童文化研究センター|Research Center for Children's Literature and Culture, Shirayuri University
雑誌
白百合女子大学児童文化研究センター研究論文集 = Studies of Research Center for Children's Literature and Culture, Shirayuri University (ISSN:13455338)
巻号頁・発行日
no.23, pp.19-38, 2020-03

長谷川武次郎は1880年代後半に木版多色刷ちりめん本の出版を開始した。優れた絵師・小林永濯の挿絵を添えた『欧文日本昔噺』シリーズ最初の4巻は、1885年秋に登場した。英文の本文を準備したのは宣教師のデイヴィド・トムソンだが、彼は滝沢馬琴が『燕石雑志』(1811)に紹介した昔話を英訳した。当初は通常の和紙に印刷されたが、約2年後に武次郎はちりめん紙を採用した。この試みが成功し、彼の事業は欧州市場に拡大したのである。