著者
尾方 克久
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.305-314, 2003-04-10

リアノジン受容体は,細胞内Ca2+ストアから細胞質へCa2+を放出するチャネルタンパクで,骨格筋にはRyR-1が発現し,筋小胞体膜のCa2+放出チャネルを構成する。N末側80%以上の大部分は筋細胞質で,4量体を形成してフット構造を構成し,T管膜のL型電位依存性Ca2+チャネルと共役して,筋細胞膜の興奮による筋細胞質へのCa2+動員をもたらす。悪性高熱は全身吸入麻酔薬や筋弛緩薬の投与により,高体温や骨格筋の異常収縮が生じる常染色体優性遺伝の致死的病態で,発症素因者にはCa2+誘発性Ca2+放出の異常亢進を認める。その約半数はRyR-1の変異による悪性高熱症(MHS1)であり,28種の点変異が報告されている。先天性ミオパチーであるセントラルコア病(CCD)に悪性高熱が生じやすいことが知られていたが,CCDもRyR-1の変異により生じることが明らかにされ,13種の点変異が報告されている。RyR-1の変異で生じるMHS1とCCDを包含する,「RyR-1チャネロパチー」という概念が,病態解明に新たな視点をもたらす。