著者
入江英嗣 山中崇弘 佐保田誠 吉見真聡 吉永努
雑誌
研究報告計算機アーキテクチャ(ARC)
巻号頁・発行日
vol.2013-ARC-206, no.5, pp.1-10, 2013-07-24

プロセッサの性能向上の基本戦略は,2000 年頃からはマルチコア構成の拡張が主流となり,トランジスタ資源をコア数の増加に利用することで,効率的に TLP 性能を向上させてきた.しかしこのアプローチも,TLP の収穫逓減やダークシリコンの増加など,継続的な成長には限界が指摘されている.この限界を打ち破り,高性能なメニーコアプロセッサを実現するための課題の一つとして,一つ一つのコアの実行性能と電力効率の双方を高める実行アーキテクチャの開発が挙げられる.ここではピーク ILP 実行幅よりも,コンスタントな高性能と高効率が求められる.3 次元実装技術に代表されるように,パッケージ内トランジスタ数の増加は堅調であり,容量を用いて処理レイテンシと電力を削減するアーキテクチャへの転換が今後のプロセッサ成長の鍵と考えられる.本論文では,ライト・ワンス・マナーに基づいた大きな論理レジスタ空間を導入することで,レジスタリネーミング処理を取り除き,更にはバックエンド幅の増加なく実行性能を増加させる STRAIHGT アーキテクチャを提案し,実現のための技術と性能の見積もりを述べる.STRAIGHT アーキテクチャに見立てたパラメタを用いた初期評価では,同じワークロードに対するエネルギー消費を 12% 削減しながら,同時に約 30% の IPC 向上が得られ,性能/パワー比を改善する新しい実行方式として有効であることが示された.