著者
山口 依里香/Erika Yamaguchi
雑誌
日本歯周病学会60周年記念京都大会
巻号頁・発行日
2017-11-13

【背景及び目的】インフルエンザウイルスは,鼻腔・口腔の細菌との混合感染により,感染が重症化することが知られている。ウイルスは自身のもつヘマグルチニン(HA)で細胞に感染し,ノイラミニダーゼ(NA)により感染を新しい細胞に伝播するが,細菌の一種がHAの活性化や,NAと同様な酵素を分泌するとの報告があり,ウイルスと細菌は互いに感染を促進する関係にある。口腔ケアの実施が,インフルエンザの発症や重症化の抑制に寄与することも,高齢者施設等での介入試験で報告されている。したがって,インフルエンザウイルスの感染予防において,口腔細菌のコントロールが可能な含嗽剤や口腔咽頭用スプレー剤の使用は有用と考えられる。これら製剤の有効成分の一つであるポピドンヨードでは,口腔細菌の殺菌作用以外にウイルスに対する直接的な不活化作用も報告されているが,同様に使用される塩化セチルピリジニウム(CPC)については報告されていない。そこで,本研究ではCPCのインフルエンザウイルスに対する不活化作用を検証した。【方法】供試薬剤は0.05~0.3%CPC水溶液,および0.3%(w/v)CPC配合スプレー剤とし,供試ウイルスとしてInfluenza A virus (H1N1) A/PR/8/34 ATCC VR-1469(インフルエンザウイルスA型)を用いた。供試薬剤1mLに供試ウイルスの浮遊液0.1mLを接種し,20秒後にReed-Muench法にてウイルス感染価を測定した。【結果】低濃度のCPC水溶液ではインフルエンザウイルスA型に対する不活化作用は確認できなかったが,一定以上の濃度域ならびに製剤化された0.3%(w/v)CPC配合スプレー剤において不活化作用が認められた。【結論】本結果から,CPCが一定濃度以上配合された含嗽剤や口腔咽頭用スプレー剤がインフルエンザ予防に有用である可能性が示唆された。