- 著者
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阿部 正佳
山崎 淳
山根 雅司
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
- 巻号頁・発行日
- vol.49, no.SIG1(PRO35), pp.127, 2008-01-15
本発表ではコンパイラキットSCKを紹介する.SCKはEmacs Lispで実装された,マルチソース,マルチターゲットのコンパイラ作成支援環境である.コンパイラキットは,単一のコンパイラと異なり,ユーザはそれを構成する各モジュールを選択的に利用するものであるから,それらのモジュラリィー,インタフェースの簡潔さと柔軟性がきわめて重要であるにもかかわらず,既存のコンパイラ作成支援環境はその実装言語に依存した複雑なインタフェースのみを提供し続けてきた.SCKでは,データ構造というものを実装言語とはまったく無関係な,独立した簡潔なプログラミング言語として定義し,さらに徹底的なモジュール分割を行うことで,実装言語から独立したコンパイラ部品を提供している.実際の実装言語はEmacs Lispであるが,Emacs Lispの知識がなくてもSCKを利用することができる.これが実装言語独立の意味である.一方で,Emacs Lispはコンパイラのような記号処理向きのプログラミング言語であり,現在最も使われている完成度の高いLisp処理系の1つである.SCKをEmacs上で利用するユーザには,簡潔で強力なコンパイラ作成環境が提供される.