著者
山科 直子
出版者
専門日本語教育学会
雑誌
専門日本語教育研究 (ISSN:13451995)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.9-14, 2011-12-16 (Released:2012-08-20)
参考文献数
6
被引用文献数
2

昨今、サイエンスコミュニケーションのフォーカスは、科学技術の普及啓発や理解増進活動から、データの解釈や社会における科学技術の活用方法についての議論へと大きく移行している。そのようなコミュニケーションでは、純粋な学問とは異なる価値観や、政治・経済など全く別の分野との関係性から科学技術を捉えることも必要となり、サイエンスコミュニケーションに携わる人材(サイエンスコミュニケーター)には、単に科学技術の学術的な知識を発信するだけでなく、多様な情報や問題意識を持つ人々の間をつなぎ、双方の建設的な議論を活性化する、ファシリテーターとしての役割がより求められるようになりつつある。本稿では、これまでのサイエンスコミュニケーションの考え方およびサイエンスコミュニケーター育成の取り組みを振り返るとともに、立場を異にする人々の相互理解を促すためのコミュニケーションの在り方について考察する。さらに、サイエンスコミュニケーションにおけるファシリテーター機能の重要性に着目し、さまざまな分野の専門知識を持つ者がこれからのサイエンスコミュニケーション活動にどのように関わり、その役割を果たしていくべきか、また、そのための人材育成の方向性について論じる。