著者
山角 博
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学会雑誌 (ISSN:00093459)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.423-440, 1969

著者は思春期心性を離人症との関連において理解するために,知的に比較的正常ないし上位にあると思われる高校生915名に,CMI,クレペリンテスト,離人感に関するアンケートなどの心理テストをおこない,さらに問題があると思われる生徒には,面接,ロールシャッハテストをもおこない,その結果を検討するとともに,思春期離人症例との比較考察をおこなった。そして次の諸点を認めた。1)正常な思春期の過程にも,神経症的傾向を示すものがみられる。2)離人感は思春期においては,正常な人々にも,特に内省的な人にはしばしば体験される。3)調査した高校生のうちで,特に離人状態群として分類された生徒に,思春期に特有な心性と思われるものが顕著にみられた。4)離人症と思春期心性にな,密接な関係がみられた。5)思春期において,両親からの分離独立,自己同一性の確立の失敗により,自己不全感,自己同一性の混乱をもたらしたものが離人症を招く可能性があると考えられる。6)離入状態群に分類された生徒では,その離人感は流動的であり,葛藤の固定化にまで至っていないのに対し,思春期離人症者では,離人感はより深刻であり,自我機能の制限,さらに自我の分裂にまで至る場合がある。