著者
安部 徹良 山谷 義博 鈴木 雅洲 森塚 威次郎
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.607-614, 1979-05-01
被引用文献数
15

更年期不定愁訴症候群の病態生理および病因は未だ仮説の域を脱していない.著者らはこれらを解明するための1つの接近法として症候による本症候群の型分類を試みた.まず,更年期障害婦人194名を対象として,17種類の症状の重症度を調査し,これに因子分析法を適用し,本症候群の状態像について検討した。すなわち,内在する因子数を,Akaikeの最小情報量基準により6個とし,その時の因子負荷行列を推定し,さらに,これをVarimax法により直交回転し,求められた因子負荷行列に基づいて内在因子の医学的解釈を行なった.その結果,第1因子を心機能障害様因子,第2因子を神経症様因子,第3因子を血管運動神経障害様因子,第5因子を知覚障害様因子,第6因子を自立神経失調様因子と命名した.次に個々の対象婦人について,上述の因子評点を算出し,因子評定上で対象婦人のクラスターを求め,本症候群を7型類別した.これらの各型の特徴および類別された人数は以下の如くである.すなわち第1型は睡眠障害を伴う神経症型(30名),第2型は心機能障害様症状と睡眠障害を伴う神経症型(19名),第3型は血管運動神経障害様症状,心機能障害様症状および自立神経失調症様症状を伴う神経症型(23名),第4型は血管運動神経障害型(17名),第5型は比較的単純な神経症型(51名),第6型は知覚障害様症状および欝症状を伴う神経症型(19名),第7型は重傷度の高い特徴的症状を持たない軽症型(35名)である.これらの型の中で第4,5,6型は,それぞれ,単独の高因子評点を持つ代表的因子,血管運動神経障害様因子,神経症様因子および知覚障害様因子を所有し,症候論的に比較的単純な型であると考えられたが,その他の型は複数の代表的因子を包含し,今後,さらに単純な型に分類できる可能性が否定できない.