著者
山辺 拓也 土谷 順彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.500-501, 2018-04-15

病態 放射線性膀胱炎は骨盤内の放射線治療に起因する出血性膀胱炎であり,骨盤内への放射線照射後6カ月〜10年で発症するとされている1).放射線治療の合併症のなかでも治療困難なものの1つであり,ひとたび発症してしまうと血尿,膀胱刺激症状が認められ,重症例では血尿のコントロールが困難となり,尿路変更術が必要になったり,時には致命的になったりすることさえある2).重篤な放射線性膀胱炎をきたした放射線治療の原疾患としては子宮頸癌が最も多く,ほかに直腸癌,膀胱癌,前立腺癌などが原因となり得る.照射線量が50Gy以下では発症頻度は約3%に過ぎないが,80Gyを越すと12%に達するとの報告や,90Gy以上ではGrade 2,3(表1)3)の放射線性膀胱炎の発症頻度が急増するといった報告が認められ,照射線量が増えるに従って発症の危険性が高くなることがわかっている4). 放射線障害の本態は血管内皮細胞による進行性の閉塞性動脈内膜炎であり,組織が傍血管性,低細胞性,低酸素状態になることとされている.病理学的には粘膜浮腫,血管拡張,閉塞性動脈内膜炎,平滑筋の線維化が認められる.通常の創傷治癒に必要な線維芽細胞が機能しないため,長期的には膀胱の線維化をきたす1).