著者
岩田 吉人
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.101-113, 1941
被引用文献数
5

1. 圃場觀察に依れば南瓜露菌病の初期發生は胡瓜の其より相當期間後れるが胡瓜に露菌病の發生激甚なる時其に隣接せる南瓜畑に全く發病を認めなかつた。<br>2. 胡瓜の露菌病病斑は型的に角形を呈し,病斑の大さは材料により平均4.7×3.4mm又は5.3×3.7mmを示したに比し南瓜の露菌病病斑は平均1.6×1.0mmで遙かに小形である。<br>3. 胡瓜上の露菌病菌は接種方法に依り,殆んど或は全く南瓜を感染せしめざるに反し南瓜上の菌は胡瓜を感染せしめ病斑及分生胞子を形成した。又其他10餘種の栽培又は野生瓜類に對する兩菌の病原性を比較した所,兩菌は大體同様であつたが唯ゴキヅルに對し胡瓜上の菌は病原性を示し南瓜上の菌は陰性を示した。<br>4. 南瓜上の露菌病菌の分生胞子懸濁水を以て胡瓜,甜瓜,越瓜等に噴霧接種すると南瓜露菌病病斑と同様な小形の病斑を形成した。<br>5. 胡瓜上及南瓜上の露菌病菌は其病原性及病徴より異る生態種に屬するものと考へられる。<br>6. 自然状態に於て胡瓜には通常の角形病斑の他に南瓜露菌病病斑に似た小形の露菌病病斑を發生するが病斑上の分生胞子形成は稀少に過ぎない。之は恐らく南瓜上の露菌病菌が胡瓜に傳染したものと思はれる。