著者
岸本 映子
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.15, no.01, pp.125-140, 2015-03-20 (Released:2018-08-02)
参考文献数
12

本研究は、英語の冠詞と「文法的な数」(以後<数>と表記する)の指導の枠組みを認知言語学の視点から体系的に提示し、さらにその動画教材の作成を目的とする。その有効性は小学校の実践授業で検証する。 冠詞や<数>は日本語話者の学習者にとっては、学習の困難点の一つとして指摘されている。理論的には認知心理学や脳科学や第2言語習得理論など学際的な先行研究の知見を活用して枠組みを構築する。学習者が中学生以上の場合、可算性は対象物の構成要素と境界を軸とした7段階のイメージ・スキーマを設けて(岸本2014)指導するが、学習者が小学生の場合、それを4段階に限定した動画教材を作成する。冠詞は不定冠詞とゼロ冠詞に焦点化し、定冠詞は本研究では扱わない。学習者が日本語話者の場合、対象物のカテゴリー分類の練習を、冠詞と可算性を軸とした4種類の指導順序で提示した。小学校で使われている教材のHi, friends!より語彙(名詞)を分析し、動画にする語彙を選定した。それぞれの名詞ごとに20~30秒程度の動画 を作成した。Hi, friends!(1)でも可算名詞の不可算化のような意味の拡張が出現していることを指摘し、意味拡張の指導の必要性を示した。また日本語との比較を通して、英語とのずれに気づかせ、日本語に対しても客観的に振り返る要素を指導に取り込んだ。動画を通して、人間が対象を捉える概念(対象を認識するイメージ)を可視化し、体系的にわかるように工夫した。小学校の実践授業を通して一定の成果が得られた。