著者
犬束 信一 若松 宣一 崎原 盛貴 土井 豊 丹羽 金一郎
出版者
朝日大学
雑誌
岐阜歯科学会雑誌 (ISSN:03850072)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.13-20, 2004-11-20

各咀嚼サイクルにおいて顎関節部荷重がいつ最大値を示すかという問いに対して明確な解答を得るために,さつまいもを咀嚼運動中の一匹の日本サルの顎関節部荷重と両側咬筋筋電図を同時測定した.ハイドロキシアパタイトとチタン酸ジルコン酸鉛セラミックスから構成される微小圧力センサーをサルの左側下顎頭前上方部にインプラントした.圧力センサー出力と筋電図との関係から,各咀嚼サイクルにおける最大荷重は,両側咬筋筋電図において筋活動休止期で発生した.咀嚼相解析の結果,Phase-2,すなわち作業側咬筋筋活動が休止し始める点から最大荷重が発生する点までの期間,の平均値は左側咀嚼では45.3msec,右側咀嚼では55.3msecであった.また,このPhase-2の期間は咀嚼周期にかかわらずほぼ一定であり,左側咀嚼(作業側顎関節)の方が右側咀嚼(非作業側顎関節)の場合よりも変動が小さいことが分かった.これらの結果から,サルの安定した片側咀嚼運動では,下顎頭前上方部に作用する最大荷重は咬合相の終末に発生し,さらにこの期間は咬合相において歯が咬合接触する期間と考えられる.