著者
嶋中 佳輝 Yoshiki Shimanaka
出版者
同志社大学文化学会
雑誌
文化学年報 = Annual report of cultural studies (ISSN:02881322)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.15-34, 2021-03

『今昔物語集』巻十九と巻二十は本朝仏法部と本朝世俗部を懸架する重要な位置にある。両巻の関係性を考えるにあたって、両巻の冒頭話群である出家説話と天狗説話の関係性に着目した。出家説話が世俗から仏法への展開を、天狗説話が世俗あるいは仏法から反仏法への展開を語ることで、冒頭話群は世俗における仏法的行為・反仏法的行為を導き出している。両巻は世俗において仏法が波及していく『今昔物語集』の構想を体現していると評価できる。