著者
川島 一也
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.20, no.11, pp.1399-1408, 1968-11-01

妊娠時に胎児, 胎盤及び腫大した子宮組織へのO_2や代謝産物の供給及び排泄等を考慮すれば子宮への血流量が非妊時に比べて増加していることに疑いはない. そこで私は家兎に関し妊娠時及び非妊娠時子宮の血流動態を検討した. 血流計としてはThermistor血流計を試作使用し, 血圧測定にはStrain-gage manometerを用い, 血管の弾性率を容積と圧関係から求めた. 又ヒト子宮に分布する血管壁の妊娠時変化を組織学的に検討した. その結果, 妊娠時は非妊時に比べ股動脈に於てThermistor血流計出力は2.3倍, 脈圧は1.2倍, 平均血圧は1.09倍, 又股動脈の弾性率は1/2.4倍となった. このことから流体力学的理論より計算すると, 妊娠時の脈流量は弾性率の変化から1.55倍, 又Thermistor出力から2.3倍に増加している. 血管壁の組織学的変化から考察しても妊娠時の弾性率の低下及び血流量の増加に対し, 有利な所見を示した. 即ち血管腔は拡張を示し又血管壁は疎な肥厚と弾性線維が増生して血管の伸縮性を助けて妊娠時の血流量増加に対し合目的な変化を示しているといえよう.