著者
平 紀子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.404-409, 2007-08-01
被引用文献数
1

近年,医療を取り巻く環境の変化に伴い,医療系図書館員が提供するサービス内容が拡大している。しかし,図書館員は情報の専門職としての教育を受けていない。また,医療に関する専門的な教育を受けていないことなどが要因となり,医療従事者のニーズを的確に受け止め,適切なサービスを提供できる専門的知識・技術を備えた情報専門職としての対応が充分にできていないのではないかと考えられる。そこで,医療系図書館員が持つ知識,技術・意識と医療従事者の情報ニーズ,図書館員に対して持つ意識を調査し,両者におけるギャップの有無を明らかにするために,北海道内の医療系図書館員129人(回答52人),医療従事者2,093人(回答839人)を対象に調査を行った。その結果,期待度を尋ねた10項目の全てに両者の意識に有意差がみられた。また,医学図書館の利用満足度では,10項日中の「講習会の開催」と「適切な文献複写費用」に有意差がみられた。図書館員の多くは,自らを情報専門職として意識しておらず,新しい知識・技術への自己評価レベルが低く,図書館員は医療従事者からは情報専門職員として期待されていないと認識していた。