- 著者
-
平塚 剛
三好 翔太郎
永田 誠一
- 出版者
- 九州理学療法士・作業療法士合同学会
- 雑誌
- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
- 巻号頁・発行日
- pp.146, 2009 (Released:2009-12-01)
【はじめに】 我々は,任天堂社製Wii Fitに同梱されているBalance Wii Board(以下Wii Board)をパーソナルコンピューター(以下PC)に無線接続し重心移動を数値化することに成功した.そこで,もしこのWii Boardが重心動揺計と近い精度を持っていれば,評価機器として利用できる可能性がある.今回,健常者がリーチ動作を行った際の重心移動をWii Boardと重心動揺計で比較することによりその精度について検討した.【方法】 PCとWii Boardとの接続はBluetoothを用いた.底面4隅の圧力センサから得られる荷重値の読み込みはネットワーク上に公開されているソフトWiiBoard to PC ver.2.0を用いた.足圧中心の座標値は読み込んだ荷重値から算出した.比較する重心動揺計はアニマ株式会社製TWIN GRAVICORDER G-6100(以下重心動揺計)を用いた.被検者は健常成人1名(男性,39歳,右利き,174cm,62kg)で,立位での右上肢リーチ動作の際に起こる重心移動の左右方向最大振幅(XD)と前後方向最大振幅(YD)をWii Boardと重心動揺計で計測した.なおこの被験者には説明と同意を得た上で実施した.リーチする点は,高さを肩峰の位置,方向を水平内転0度,45度,60度,90度の4方向とし,肘伸展位,前腕回内位,手関節中間位,手指屈曲位で第三中指骨遠位端をそれぞれの方向へ向けた開始肢位から15cm遠方とした.それぞれの上で一点20回のリーチを行い4方向合計で80ずつのデータを採取した.採取したデータはXDとYDについて相関を調べ,回帰直線に表した.【結果】 4方向を併せた15cmリーチにおけるWii Boardの最大振幅の平均はXD8.28±4.43cm,YD4.97±1.95cm,重心動揺計の最大振幅の平均はXD8.31±4.44cm,YD4.81±1.90cmであった.両者の差の平均はXD0.56±0.43cm,YD0.63±0.47cmでこれは統計的にみて有意な差であった(P<0.01).最大振幅の相関係数はXDが0.98 ,YDが0.91でこれはどちらも強い相関を認めた(P<0.01).また回帰直線の式はWii Boardに対して重心動揺計のXDがy=0.985x+0.087,YDがy=0.941x+0.444であり傾きはほぼ1であった.【考察】 Wii Boardは重心動揺計とリーチ動作で比較した結果,高い精度を持っていると思われた.これは軽量で持ち運びが容易であることから,病棟などの環境で日常生活動作における重心移動を評価することが可能であると思われる.また,手に入りやすいこともあり自宅での自主訓練またはその効果判定などの利用も期待できる.