著者
平嶋 美鈴 名渕 浩司
出版者
小学校英語教育学会
雑誌
小学校英語教育学会誌 (ISSN:13489275)
巻号頁・発行日
vol.17, no.02, pp.85-100, 2017-03-20 (Released:2018-08-02)
参考文献数
21

本研究は,トップダウン的リタラシー指導法の一つとして「指追い」が,2つのタイプのテキスト(中学校1 年生用英語検定教科書のテキスト,ナーサリー・ライムのテキスト)それぞれにおいて効果があるか検証を行った。公立小学校の5,6年生362 名を対象に,音声と文字間の対応を文・単語・音素—書記素の3 つの単位に分けて一致課題を行い,指追いを行った後に実施した同形式のテストでどのように結果が変化するかを比較した。 結果は,教科書テキストを用いた場合には指追いの効果は見られなかったが,ナーサリー・ライムのテキストを用いた場合では,指追いを行ったグループのみ音素—書記素単位での一致課題の得点が有意に伸び,単語単位でも点数の伸びが有意傾向を示す結果となった。 これらの結果から,これからの小学校における英語教育でリーディングにつなげるリタラシー指導を行う際には,ナーサリー・ライムのテキストを用いて指追いを行うことにより,児童は文という長い文字のまとまりの中からでも,音素—書記素対応関係まで暗示的に学習できることが明らかとなった。