- 著者
-
平田 正一
- 出版者
- The Phytopathological Society of Japan
- 雑誌
- 日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, no.1, pp.21-24, 1953
バイラス罹病の馬鈴薯,大根,蕪菁及び甘藷の塊根並に莖の搾汁ガーゼ濾液の透明度を日立製光電光度計で測定し健病間の比較を試みた。その結果は以下の如くであつた。<BR>(1) 馬鈴薯の透明度は收穫時から貯藏中漸次低下して來る。健薯は病薯よりも高く,その較差は小である。罹病度に應じて透明度は低くなり塊莖の大小とは相關は認められず,又多數塊莖の平均透明度は健薯が高いけれども各個體値は相當亂れている。健病薯間で較差の最大は稀釋度1/8で表される。<BR>(2) 大根の汁液の透明度の健病差は馬鈴薯よりも更に大幅であるがその傾向は兩者共同樣であつた。幼齡期の罹病株では或物質の増大が行われるが老齡化に伴う病勢の進行と共に物質の移動或は生成は阻害され,透明度は幼齢期低く,老化と共に高くなる傾向がある。根部の上位は透明度大で,健病較差の最大値は稀釋度1/8に於て示された。<BR>(3) カブラは大根と略々同樣の傾向であるが,甘藷の健病透明度の差は小さかつた。<BR>(4) この實驗に於ける生體汁液の透明度は含有蛋白量の多寡と略々反比例的に示され,汁液の溷濁度は蛋白量に依て決定される。この整律に從わない場合は多くは汁液中の蛋白イオンの自己脱電による凝集と沈澱の起るためであつて,この事實は採汁後時間を經過した試料において或は罹病體汁液において示される。透明度と蛋白量との關係曲線は比例直線として示されず物質定量のための透明度測定として利用し難いが,診斷上に於ける健病の比較方法としては利用し得る。