著者
平芳 與之助
出版者
京都府立医科大学
雑誌
京都府立医科大学雑誌 (ISSN:00236012)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.253-265, 1938

生活體ノ新陳代謝研究ニ際シ,新陳代謝終産物並ニ中間代謝産物ノ種類及ビ量ヲ正確ニ知ルコトノ必要缺クベカラザルハ多言ヲ要セザル所ナリ.從來生體ノ正常及ビ病的状態ニ於ケル靜脈血中ノ糖,乳酸,あせとあるでひーど及,あせとん體量ニ就テハ多クノ學者ニヨリ夥多ノ報告相次デ發表セラレタリト雖,生體内ノ代謝機轉ヲ説明スルニハ單ニ靜脈血中ノ該物質研究ノミニテハ猶不充分ニシテ,少クトモ組織中ニ出入スル動,靜脈血中ノ此等物質ノ分布ニ就テ檢索セザルベカラズ.然ルニ之等ニ關シテハ其ノ業績頗ル寥々タリ.即チ此等業績中其ノ多クハ血糖ニ關スルモノニシテ,血液乳酸ニ關シテハ僅ニ二,三ノ報告ヲ見ルノミ.而シテあせとあるでひーど及,あせとん體ニ關シテハ余ノ薄識未ダ之アルヲ聞カザリシハ甚ダ遺憾トスル所ナリ.余ハ諸種ノ新陳代謝中間産物實驗中先ヅ正常状態ニ於ケル犬後脚ノ糖及,新陳謝代謝中間産物ノ分布ヲ研鑽シ,次ノ結論ニ到達シタルヲ以テ之ヲ報告セントス.1)もるひね麻醉犬ノ股動,靜脈血中ニ於ケル糖,乳酸,あせとあるでひーど及,あせとん體量ヲ測定シ其相互的關係ヲ比較觀察セリ.2)股動脈血中ノ遊離糖及,總あせとんハ股靜脈血中ノソレヨリ高ク,其差ハ平均3mg%及,0.12mg%ヲ示セリ.3)股動脈血中ノ乳酸及,あせとあるでひーど量ハ股靜脈血中ノソレニ比シ例外ナク低ク,其差ハ平均1.74mg%及,0.05mg%ヲ算ス.4)雌雄ニ於ケル含水炭素及,脂肪代謝ノ中間産物ノ量的差異ハ實際上何等確認スルコト能ハズ.