著者
庄子 聖人 中田 裕之 鷹野 敏明 大矢 浩代 津川 卓也 西岡 未知
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

地震や台風、火山噴火などの下層の現象に伴い、大気波動が生じ、これによって電離圏擾乱が引き起こされることが知られている。火山噴火に伴い、大気波動が生じることは知られているが,火山噴火に伴う電離圏擾乱の観測事例はそれほど多くない。そこで本研究では、火山噴火に伴う電離圏の変動について、全電子数(Total Electron Content(以下TEC))を用いて解析を行った。本研究では、国土地理院のGNSS連続観測システム(GNSS Earth Observation Network : GEONET)より導出されたTECデータを使用した。また、電離圏貫通点は300kmと仮定した。解析に用いたデータは、GEONETの受信点1200点、衛星仰角30度以上の30秒値である。解析対象は桜島で発生した火山噴火4事例(2009年10月3日7時45分(UT)、2012年9月19日1時7分(UT)、2012年12月9日20時25分(UT)、2014年2月12日20時21分(UT))である。噴火の規模は東郡元における空振計データにより評価した。それぞれの事例においてTEC変動を抽出したところ、空振計の圧力変動が大きいほど、TEC変動が大きい事例が多かった。エネルギーが火口からの距離応じて減衰していくため電離圏の変動が火口からの距離と逆相関関係を取ると考えられる。そのため、TEC変動と火口から貫通点までの距離との相関を求めた。その結果、4事例中1事例で距離との逆相関関係はみられたが、3事例は相関関係がはっきりしなかった。これは磁場の影響と、変動の波面と衛星-受信機の視線方向が直角でない2つの影響によるものであると考えられる。これらの影響を取り除くために音波レイトレーシングのデータを算出し補正行った。補正したデータに対し、補正前のデータと同様にTEC変動と火口から貫通点までの距離との相関を求めたところ、4事例中3事例で補正前と比べTEC変動と火口からの距離との間に強い逆相関関係が確認された。しかし、補正したデータにおいて全体の傾向と比べ高い値を示したデータがいくつかみられた。これらのデータはTEC変動に対する磁場の影響を取り除くための補正が他のデータと比べ大きくかかっている傾向がみられたため、補正が効きすぎているのではないかと考えられる。以上の結果より、火山噴火の規模とTEC変動の間には定量的な関係があると考えられるが、多くの場合は磁場と視線方向の影響を補正する必要があることが明らかとなった。