著者
張 潔麗
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要
巻号頁・発行日
vol.67, pp.57-70, 2021-03-25

本稿では中国高等職業教育分野における1+X制度の位置づけを明らかにするため、従来ある各種証書を制度枠組みと高等職業教育分野における取得方法を整理した。その結果、高等職業教育分野と企業・産業界との緊密なつながりを図る方向性は2000年以降継続してみられ、その具体的な方法は、既存の職業資格証書自体の高等職業教育分野への導入から、各種職業基準が反映される職業技能水準証書の新設までに転換したことが明らかになった。現在、高等職業教育分野では学歴証書、職業資格証書、職業技能水準証書が同時に存在し、これらの組み合わせからなる双証書制度および1+X制度が異なる位置づけを有している。後者の1+X制度は、労働者の学歴教育および職業の間の流動可能性を向上させて、高等職業教育分野と産業界の境界線を不明確にするものとして、高等職業教育分野と企業・産業界の双方の需要が反映される架け橋として位置づけられているといえよう。
著者
張 潔麗
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.289-301, 2019-03-27

中国では21世紀に入って以来、四年制の高等職業教育及びその提供機関としての応用技術型大学を重視することが、中央政府によって提唱され始めた。同時に、応用技術型大学は新設ではなく、既存の四年制本科大学のうち、地方政府所管の一部本科大学からの転換からなることが提起されている。そこで、管理主体になっている各地方政府はどのような意図で、応用技術型大学への転換をどのように計画し推進しているのかを、教育分野と経済分野の政府文書から考察した。その結果、地方政府は中央政府が提起した方針のもとで、各地の経済発展、産業構造の変化によって生じる質の高い専門技術人材の需要に応えるために、応用技術型大学への転換を推進している。各地方政府が実情に応じて多様な計画を定めている、そこには産業構造や高等教育の規模とその構造が影響を与えていると考えられるのである。