著者
後藤 千佐子
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.118, pp.135-150, 2013-06-30

本研究は,発達障害のある子どもを診察している医師が,子どもへの診断名説明を実際にどのように説明しているのか,その際に何を伝えようとしているのかを明らかにすることを目的とし,4 名の児童精神科医に対して半構造化面接を行うことにより検討した。その結果,診断名説明の実施に対する考え方は医師により異なり,その差は発達障害観の違いによって生じることがわかった。診断名説明を行うことへの躊躇は全ての医師が感じていた。その理由として発達障害の診断名が社会的な意味を持ち,ラベリングやスティグマの問題を含むためということが示唆された。診断名を説明するとき,医師は単に名称を伝えるだけではなく,その子どもの良いところが伝わるように留意し,マイナスのものをプラスに転換するように説明を行っていた。