著者
徐 希姃
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.41-50, 2005

20世紀美術は、科学技術の進歩を背景として技術を造形表現に積極的に導入しなから繰り広げられた。モホイ=ナジもモーター、金属部品、写真、光学機器などを自ら造形表現に導入して先駆的な活動を展開し、テクノロジー・アートの先駆者として認められている。本研究では、モホイ=ナジの造形理念の中心を占める「光の造形」概念を彼の作品と理論書から探り、モホイ=ナジによってなされた「光の造形」の視覚的意味を探ることを目的とする。そこで、彼の「光の造形」概念の形成過程を踏まえて、「光の造形」概念の中心を占める"Optical"という意味をVisualという言葉との比較によって検討し、"Optical"概念から検討した「光の造形」の視覚的意味を探った。モホイ=ナジの「光の造形」は、1922年にベルリンに亡命し、ドイツの工業化された環境の影響を受けて形成されたもので、物に光が当たることによって物の表面が明るく見える現象を造形に取り入れることから始まった。彼は眼が光を媒介として物を見るという視覚に関る生理的な仕組みを意味する"Optical"という概念に基づき、光そのものやそれによる視覚の生理的な反応を用いた表現を「光の造形」概念としている。彼の「光の造形」概念は、工業的な環境を背景にして用いられ始めた光という新しい材料とその表現について考える上で良い手がかりになると思われる。