著者
山田 昇 徳原 真弥 円山 重直
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.150, pp.9-17, 2009-09-05

夏期の都市街路空間における熱的快適性の重要な因子であるふく射について,ふく射性ガスによる吸収・放射の影響を考慮した路面-人体スケール物体間のふく射伝熱解析を行った結果を報告する。解析モデルは「路面」,「街路空間中のふく射性ガス」,「人体スケール物体」により構成され,日射を無視した際の人体スケール物体へ入射するふく射熱流束に着目した.ふく射性ガスとして水蒸気および二酸化炭素を考慮し,統計狭域バンドモデルにより単色吸収係数を求め,モンテカルロ法により放射・吸収挙動を非灰色解析した。解析スケール,路面温度,ふく射性ガス濃度および気温をパラメータとする解析によりふく射性ガスが及ぼす影響を明らかにした.ふく射性ガスの影響は解析スケールが大きくなるほど顕著になり,解析スケールが20m以上になると,ふく射性ガスを考慮した場合の解析結果は考慮しない場合よりも120〜160W/m^2ほど人体スケール物体に入射するふく射熱流束が大きくなり,日射を除く全入射ふく射熱流束の約50%をふく射性ガスから受けることが示された.また,路面から人体スケール物体へのふく射はふく射性ガスによって約30%が吸収されることが示された.現在および2100年頃の気温,相対湿度,二酸化炭素濃度を各「35℃,66%,400ppm」「40℃,66%,800ppm」として解析を行った結果,人体スケール物体に入射するふく射熱流束に顕著な差は生じなかった.さらに,水蒸気の影響に比べて二酸化炭素の影響は極めて小さいこと,人体スケール物体の下部が路面からのふく射を強く受けるのに対し,上部はふく射性ガスからのふく射を強く受ける傾向があることが示された.