著者
徳水 博志
出版者
岩手大学地域防災研究センター
雑誌
災害文化研究 = Journal of research on disaster culture
巻号頁・発行日
vol.4, pp.17-32, 2020-03-27

2011年3月11日に発生した大川小学校事故では児童74名、教職員10名が亡くなった。事故の要因は、避難マニュアルに不備があり、避難場所が明記されていなかったことにある。しかし、なぜ裏山ではなくて、津波がやって来る堤防道路に向かって避難を開始したのか、それが最大の謎である。筆者は、大川小学校の教師たちが判断を誤った要因を北上川越流津波のイメージを持っていなかったからではないかと推測した。つまり、当時の教師は筆者も含めて、津波の知識をよく知らなかったと言える。大津波警報10mとは「平均的な値」であり、実際の到達津波は1/2 ~ 2倍の幅があること、津波は海岸地形や陸上地形で増幅して地域を襲うこと。このような新しい知見を持っておれば、自分の地域を襲う津波を具体的にイメージできて、迅速な避難行動がとれたはずである。津波防災能力とは、①津波についての新しい知見➡②情報の収集力➡③災害をイメージする想像力➡④想定外に対処できる迅速な判断力である。この能力を身に付けるための「津波防災教育プログラム」の概要について述べる。