著者
手島 知明
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
精神身体医学 (ISSN:05593182)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.36-48, 1965-03

夜尿の問題は、古い歴史と新しい対策の間に多くの研究と報告を重ね、いまだに満足できる効果をうることができず、一般家庭にとっては大きな悩みの一つとなっている。それは、排尿機序が中枢、末端神経系にわたる錯綜したメカニズムによって営まれ、とくに精神心理面と関係が密接で、疾患と考えるよりもむしろ一つの症状とみられmその症状に対する追求が複雑多岐にわたるためと考えてよかろう。従来医療の必要を認める夜尿症児や、いわゆる施設児を対象をした夜尿症の報告は多数見られるが、診療は必要とせず、たまたま夜尿を漏らす子についての考察はまれであり、夜尿の実態について、体質学的見地から遠城教授^<1)>は「夜尿の症状に関する体部分は異常体質の基礎の上にたつ膀胱領域の過敏症であり排尿機構乾性への一つの段階のずれで、すべて病的としえない相対的観念でもある」と述べているように、夜尿現象そのものよりも夜尿児の生育歴や生活環境、とくに小児期における排尿のしつけや親子関係が、子供の性格や心情といかにからみ合っているかに問題の焦点が潜み、性活指導の責を負う家庭ならびに学校がこの点に十分な理解を深めることの必要性を認めたので、生活態度や習慣形成面で、自律的徴候の顕われる学童後期における「夜尿をもらしやすい子」の自律神経と意識の問題に関係のある精神身体的ならびに環境的因子を追及する糸口としてまず家庭および学校の生活調査により、生育および心情の両面にわてる検索を行ったので、これを報告する。