- 著者
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文 昶允
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 日本語の研究 (ISSN:13495119)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, no.3, pp.18-34, 2017-07-01 (Released:2018-01-01)
- 参考文献数
- 23
本研究では,複合構造を持つ外来語から形成される短縮語を取り上げ,その語形成過程にみられる世代差の実態について,仮想語を用いた実験を通じて分析する。前部要素の2モーラ目に長音を含む複合外来語に基づいて短縮語が形成される際には,短縮語の出力形にその長音が保たれるタイプ(保持形)と,長音を組み込まず,長音の直後にある自立モーラで全体のモーラ数を補うタイプ(補完形)に加え,長音が短縮形に組み込まれず,かつ補完形も取らないタイプの3パターンが生じる。本研究で行った仮想短縮語実験を通じて得られた結果は以下の2点である。第一に,複合外来語に由来する短縮語形成過程においては,保持形が一般に選択されやすい傾向が観察される。第二に,中・高年齢層が専ら4モーラ短縮形を好む一方,若年齢層には3モーラ短縮形という変則形をも許容する傾向が指摘できる。これは,短縮語形成の方略が世代間で異なることを示唆している。