著者
斎藤 仲道
出版者
福岡医学会
雑誌
福岡医学雑誌 = Fukuoka acta medica (ISSN:0016254X)
巻号頁・発行日
vol.104, no.10, pp.326-333, 2013-10-25

この総説は2013年3月16日, 西南学院大学コミュニティーセンターホールで開催された公開シンポジウム「新型出生前診断の導入を考える」で, シンポジストの一人として「新型出生前検査について」と題して講演した時の原稿に少々加筆したものである. 昨年8月読売新聞のスクープ記事には「妊婦血液」で「ダウン症診断」, 「精度99%」の文字が踊った. この検査の導入を検討していた無侵襲出生前検査共同研究施設Non-Invasive Prenatal Test (NIPT) consortiumには検査を望む妊婦の問い合わせが殺到したという. 研究対象が限られたため, 侵襲的な羊水検査までもが例年になく増加した. 高年妊婦にダウン症など染色体トリソミー児の出産リスクが高まることを広く社会に周知したマスメディアの役割も見逃せない. 「障害児を避けたい」というごく自然な感情が, 倫理とは別次元の実用主義(プラグマティズム)へと妊婦を駆り立てた, ともいえる現象であった. そこには今までの倫理を超えたパラダイム・シフトが起ろうとしているかのようであった.