著者
新井 克之
雑誌
朝日大学留学生別科紀要 = Review of Asahi University Japanese Language & Culture Course
巻号頁・発行日
vol.18, pp.11-25, 2021-03-31

日本語によるコミュニケーションの機会がほとんど存在しない環境にある日本語学習者(以下、学習者)にとっての日本語学習の意味とその効果について、ライフストーリーインタビューによる調査をおこなった。調査の結果、学習開始以前には、生まれ育った環境に対するある種の〈葛藤〉を持っていた学習者が多いことが明らかになった。彼らは、そのそれぞれの〈葛藤〉を日本語学習によって意図せずとも克服しており、日本語学習者ならではの新たな価値観を日本語や日本文化から体得していること、それが、学習者のライフコースにおいて多様な影響を与えていたことが分かった。本研究は、従来の筆記試験やOPI試験、またCan-doといった「使うための日本語学習」についての評価とは異なった角度からの学習評価であり、日本語学習の意味を再検討するものである。