著者
秋山 礼子 岡本 裕樹 鳥 祐陛 新井 恒行 石井 雄大 安江 忠晃
出版者
法政大学懸賞論文審査委員会
雑誌
法政大学懸賞論文優秀論文集
巻号頁・発行日
vol.37, pp.1-18, 2015-05-29

2011 年の世界の喫煙者数はおよそ 14 億人に達し、世界の人口全体の 22.5%が喫煙をしている(WHO2011)。ベトナムにおける喫煙率は 23.8% と世界水準と同等であるが、男性の喫煙率は 47.4% であり、世界水準と 10% 以上の大きな差がある。一方で女性は、世界水準を大きく下回る 1.4% の喫煙率である。Ministry of Health はタバコ税を 2015 年に現在の 65% から 105% までに増税する提案をした。また、2018 年までに 145% から 155% に増税することも計画されている。増税によって喫煙率の減少は予測されるが、タバコには中毒性があり、喫煙者にとって禁煙はたやすいことではないのも事実である。ベトナム政府は増税の提案をしている一方で、年々上昇しているタバコの密輸への有効な政策を見出せていないことが大きな課題となっている。また、タバコ消費量の減少により、タバコ市場は縮小し、タバコ産業に従事している者は、雇用機会を失うことになるだろう。このような不利益がある中で、最も好ましい価格はいくらなのか。タバコの適正価格についての研究は未だ少ないが、後藤(1998)は、「社会コストを負担した均衡価格」の一般理論を展開していて、タバコの適正価格を算出している。これに対して河野(2008)は、後藤の算出方法、社会コストの定義に関して、経済学の視点からみると疑問が感じられると述べている。そこで本稿では、経済メリットと社会コストを用いて、最適なタバコ価格は 2.2 倍であると結論付けた。また、ベトナムの大きな課題となっている密輸は増税する際に考慮すべき問題ではないことを明らかにする。