著者
日高 高徳
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.48-52, 2019-04-10

summaryAryl hydrocarbon receptor(AHR)は大気汚染物質や皮膚常在菌などに含まれる化学物質をリガンドとして認識し,それらを代謝する酵素を誘導する受容体型転写因子であるが,近年アトピー性皮膚炎に関連する遺伝子群の発現も制御していることが報告された.具体的には,表皮におけるAHRの活性化はフィラグリンをはじめとするバリア機能分子の発現を増強させ,TSLPやIL-33などのアトピー性皮膚炎に関連する上皮産生性サイトカインを発現し,更に神経伸長因子ARTEMINの誘導により表皮内への瘙痒伝達性の神経伸長を引き起こすことでかゆみ過敏状態につながることが示された.表皮におけるAHR活性の調節はアトピー性皮膚炎の病態改善につながることが期待されるが,AHRリガンドTapinarofを含有する外用薬がPhase Ⅱ studyを終えて,アトピー性皮膚炎に対して奏効することが示された.