著者
早乙女 恵子 高橋 季穂 笹田 晋司 佐藤 誠
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.105-107, 2002 (Released:2008-07-30)
参考文献数
4
被引用文献数
1

近年、世界中の主要な美術館、博物館におけるデジタルアーカイブ作業が多く見られる。その理由の一つは展示物のテーマ内容を、従来の紙面や映像などといったもので参加者に伝えるよりも、より効果的で深い没入感を与えられるからである。また劣化を免れえない重要な文化財や、作法、祭礼、演奏といった無形の文化財もVR技術を用いデジタル化しインタラクティブ性を付加することで、従来からの視覚的な伝達のみでなく、より直接的に人間の持つ多様な感覚を刺激することが可能になる。本研究は故宮博物院所蔵の古典的打楽器“編鐘”の演奏体験を東工大GUI システムのSPIDAR、そして鐘の音の自動演奏システムを用いることにより高い臨場感、再現性を実現している。本研究においてはSPIDAR を用いて参加者から入力された力量のエネルギ-の制御を行い、それにより仮想空間内での鐘の音の自動演奏が可能である。SPIDAR を用いて参加者から入力された力量は仮想空間内の隣接する鐘の振動、音といったような物体同士の相互作用に大きく関り、それにより得られる感覚は参加者にフィ-ドバックされる。また仮想空間内で起こる事象はすべて物理計算に基づくものであり、参加者は実物とほぼ同じような体験をすることが出来る。最終的に本研究は仮想空間内での自動演奏を用いて、従来の再現のみであるデジタルア-カイブにインラタクティブ性をもつア-ト的要素を含めた、研究と作品を融合させた新たなア-トの研究を目標として行う。