- 著者
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明石 博吉
- 出版者
- The Chemical Society of Japan
- 雑誌
- 工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.12, pp.1909-1912, 1963
- 被引用文献数
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イタコン酸の反応の一つとして,イタコン酸と酢酸ビニルとの反応によって,ビニルエステルを得る可能性を検討するために両者の反応を行なった。さらにポリビニルアルコールと無水イタコン酸との反応によってポリビニルイタコネートを得た。<BR>反応方法はイタコン酸と酢酸ビニルとの反応では,Adelmanのビニル交換反応の方法に従って,イタコン酸を酢酸ビニル中に加え,硫酸水銀(II)を触媒にして常温放置または沸点で熱して行なった。ポリビニルイタコネートは無水イタコン酸とポバールを酢酸中(酢酸ナトリウムを加え)または,ジメチルホルムアミド中でピリジンを触媒として熱して得られた。結果はイタコン酸と酢酸ビニルの反応では酢酸ビニル,アセトアルデヒド,酢酸等の低留分を留去した後,減圧蒸留すると,エチリデンジアセテートに相当する留分と主留分I(bp82~85℃/13mmHg)と後留分II(bp88~95℃/13mmHg)が得られた。Iは元素分析,赤外線分析その他の結果からエチリデンジエステル型の反応生成物(A)であることがわかった。後留分中には無水シトラコン酸およびイタコン酸ジビニルエステルが混在していることがわかったが,沸点近接のため単離できなかった。シトラコン酸の場合も酢酸ビニルとの反応で同様の生成物が得られた。また,ポリピニルイタコネートは熱水に不溶の弾力ある透明なフィルムを作る固体樹脂で一般の溶剤にとけ難い。ナトリウム塩は水溶性で高分子電解質の一種と考えられる。