著者
本田 尚正 春日 菜季
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.25-31, 2010

本研究では,山地域での土塊の運動に関する質点系の支配方程式に基づく土砂災害危険領域の設定手法の現地への適用性について,2004年10月の新潟県中越地震で数多くの表層崩壊や地すべりが発生した十日町市域を事例として考察した。同地域内で当手法によって土砂災害危険領域を設定し,それと新潟県により公表されている土砂災害警戒区域等(イエローゾーンおよびレッドゾーン)とを比較した結果,計算結果と土砂災害警戒区域,いわゆるイエローゾーンはよく一致した。一方,計算では危険領域とされるが,イエローゾーンに指定されていない箇所では,擁壁工や法枠工といった防護施設により一定の対策が施されていることを現地で確認した。このように当手法によって土砂災害危険領域を広域的かつ簡便に設定でき,地域防災計画を策定する際の有用な情報として提供できることについて,一定の妥当性が見出された。一方,当手法による計算結果は,検討対象となる斜面の縦断形状や,保全対象物周辺の地形条件の影響を強く受けるため,計算に使用する地形データの精度を慎重に取り扱う必要がある。