著者
有益 祥子 及川 卓郎
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.269-280, 2017

<p>本研究は,ブタの繁殖形質に関するメタ分析により品種と気候帯の効果およびそれらの交互作用について明らかにすることを目的に行った.データには205論文の2097件の形質平均値を使用した.試験地をケッペンの気候区分に従い温帯,熱帯,亜寒帯に分類した.分析対象形質は,生存産子数,離乳産子数,離乳時平均体重,離乳時一腹体重,分娩率,分娩間隔などの12形質である.分析には統計ソフトウェアSASを使用した.SAS分析プロセジャーは,研究論文データに共通な変量効果を含む混合モデルMIXEDである.分析モデルでは,標本数を誤差分散に対する重みづけ値として考慮した.主効果に対する有意性検定の結果,多くの繁殖形質で気候帯,品種,産次数の効果が有意性を示した.一方,経営体の効果は少数の形質で有意性がみられた.本分析の結果,改良種として世界の広い地域で飼養されているランドレース種と大ヨークシャー種の高い繁殖能力が示された.この高い能力は,品種の原産地である温帯に留まらず,熱帯においても若干の低下はあったもののみられ,これらに亜寒帯を加えた3地域で示された.また,西洋種間交雑種に代表される交雑種では,温度環境が熱的中性圏以外の温度ストレスがかかる地域においてヘテローシス効果により高い能力が示された.</p>