著者
早川 武志 石田 治久 百田 昌史 高木 佳子 生駒 英長 水田 聡美 橋口 鮎美 田尻 香織 本江 篤規 毛利 誠
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第31回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.170, 2009 (Released:2009-12-01)

【はじめに】 パーキンソン病(以下PD)では長期の服薬に伴い日内変動と同様に日差変動も出現すると言われている。この日差変動は服薬が管理されているにも関わらず出現することも多く、日常生活やリハビリテーションの阻害因子となっている。しかし、日差変動に関する報告は未だ少ない。そこで今回、日差変動に影響を与えると思われる諸因子をいくつか取り上げその関係を調査したのでここに報告する。 【対象】 現在当院利用のPD患者31名中「日によって調子に差がある」と答えた23名(男性7名、女性16名、平均年齢63±13歳、Hoehn&yahr stageI:3名、II:5名、III:5名、IV:6名、V:4名)を対象として調査を行った。 【方法】 1日の症状変動を平均してvisual analogue scale(以下VAS)を用いて、10:最高に良い、5:普通、0:最も悪いとし5以下(普通より悪い)と答えた日に次の諸因子 1:睡眠障害(寝つけない、眠れない、頻繁に目が覚める)、2:便秘、3:精神的要素(普段は感じない不安、心配事、イライラなど)、4:気候・気温(寒暖や急激な変化)、5:疲労のうち当てはまっているものを選択してもらった。(複数回答可)。 【結果】 今回の調査においては、1:睡眠障害 11件、2:便秘 12件、3:精神的要素 14件、4:気候・気温 10件、5:疲労 6件であった。最も多かったのが精神的要素であった。また、Stage別に見るとIでは気候気温、IIでは精神的要素、IIIでは便秘、IVでは睡眠障害・便秘・精神的要素、Vでは睡眠障害が最も多かった。 【考察】 今回の結果をみてみると、全体では精神的要素が当てはまると答えた人が最も多く全体の約6割であった。PDでは精神的な緊張や興奮などが振戦を増強させるなど心理的な要素が身体に影響を及ぼす事はよく知られている。今回の結果も同様に精神的要素が身体に影響を与え、症状変動にも大きく影響を与えているのではないかと考えられた。また、stage別ではstageが進行するにつれて睡眠障害や便秘の割合が増えてくる。これは、睡眠障害は睡眠中にドーパミンが産生される、便秘は薬の腸からの吸収に影響する、など薬効や血中ドーパミン濃度と密接に関係しているためだと考えられる。PDではStageが進行するにつれて薬物に依存する割合が高くなってくるため、これらの因子が大きく影響を与えるものと推測される。従って、上記の症状を把握しアプローチしていく必要があると思われる。具体的には、早期からの精神的なフォロー、生活リズムの確立、便秘予防体操などを行うことにより、症状の変動を少しでも抑える事が出来るのではないかと考える。