著者
本澤 彰一 松中 昭一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.30-35, 1986-05-26 (Released:2009-12-17)
参考文献数
22

エンドウ葉リーフディスクを用いて, 除草剤 glyphosate の各色素生合成経路への阻害機構を調べた。1. 3種の芳香族アミノ酸は, 植物体内に取込まれタンパク質へと合成されたが, これらのアミノ酸3種の添加では, glyphosate の阻害からの完全な回復はなかった (Table 1 and Fig. 1)。2. 1つの色素生合成経路の前駆体化合物を添加しても glyphosate の薬害からの効果的な回復はなかった。しかし, 3種の芳香族アミノ酸, ホスホエノールピルビン酸及びδ-アミノレブリン酸の5種類全部を同時に添加した場合には, クロロフィル及びアントラキノンの減少の緩和及びシキミ酸蓄積の減少に効果的であった (Table 1 and 2)。3. カロチノイド生合成阻害を作用機構とする除草剤 methoxyphenone 処理によっては, この経路の末端部位の阻害によるフィトエン, フィトフルエン及びζ-カロチンの蓄積とβ-カロチンの減少が認められた。しかし, glyphosate 処理ではこれらの化合物の蓄積は認められず, 明条件下のみでβ-カロチンが減少した。したがって, glyphosate のカロチノイド生合成阻害は, その末端部位ではなく別の部位と考えられる (Table 3)。4. Glyphosate 処理により, 14C-アセチルCoAのクロロフィル, カロチン及びキサントフィルへの取込みが同程度阻害された (Fig. 2)。5. Glyphosate は, 5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼを阻害するのに加えて, 植物色素生合成経路の初期段階を阻害する可能性も考えられる。