著者
杉前 昭好
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.416-424, 1983-10-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
15
被引用文献数
1

重液分離法とICP発光分析法の組み合せにより, 各種大気試料中の金属成分の密度分布の測定を実施した。測定対象試料はピル空調フィルター付着粉じん, Hi-volによる浮遊粉じん試料, Low-volによる大気浮遊粒子状物質試料, アンダーセン・サソプラーによる粒径別分級捕集試料, 降下ばいじんなどであり, 空調フィルター付着粉じんについては, Zn, Pb, Cd, Cr, Mn, Fe, V, Cuの8成分, その他の試料については, Zn, Fe, Mn, Cuの4成分の密度分布を測定した。各試料について, 特徴的な密度分布パターンが得られ, 降下ばいじん中の金属成分の密度分布曲線には密度2.7g/cm3と3.3g/cm3以上の位置にピークがあるのに対し, 浮遊粉じん中の金属成分は金属化合物であるとは考えにくいような低比重であることが判明した。また試料捕集面への空気取り込み流量の差が密度分布パターンに影響を及ぼしており, 空気吸引流量の大きい場合には, 高密度成分の比率が増加の傾向を示した。密度分布曲線には, 金属成分間でも差異があり, Znで代表される人為発生源からの寄与の大きな元素は低密度であり, 自然発生源からの寄与率の高いFeなどは比較的高密度成分の比率が高くなる傾向があった。またアンダーセン・サンプラーにより, 空気力学的粒径に応じて分級捕集した粉じん中の金属成分の密度分布には相互にかなりの差異があり, 微小 (粗大) 粒子捕集ステージには低 (高) 密度粒子が分級捕集されていることも確認された。