著者
杉浦 文哉
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.B08-B08, 2010

昭和30年代に台頭した女性用自転車は、現在日本における自転車利用のおよそ8割を占めるシティ車の原型となっている。シティ車の誕生とともに自転車は最も身近で手軽な交通手段として人々の生活に定着したが、現在その利用環境には多くの問題が生じている。放置自転車や交通事故等に代表される自転車利用の諸問題に対し行政や自治体により対策が行われているが、依然として解決の兆しは見えておらず、現状の利用環境において自転車が移動手段として持つ優位性を十分に発揮出来ているとは言い難い。自転車利用の問題は昭和後期における自転車利用率の急増とともに表面化し始めたが、その本質にはシティ車を中心として形成された日本独自の自転車文化の性質が深く関わっているものと推測される。 本研究では日本における自転車の利用形態がどのように形成されてきたのか、調査・考察を行う。それにより日本の自転車利用における文化的特性を明らかにし、現在の利用環境をめぐる諸問題についてその要因の一端を明らかにする。