著者
杉田 文
出版者
日本水文科学会
雑誌
日本水文科学会誌 (ISSN:13429612)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.155-160, 2014-08-31 (Released:2014-11-08)
参考文献数
14
被引用文献数
2

地下水中の硝酸性窒素濃度が平面的に大きくばらつく要因について,流域内が主に農業地域で構成されている場合を想定して整理した。主な要因として,①土地利用分布,農地における作物種や肥培管理の違い,降水と施肥のタイミングの違いなどによる溶脱量の平面的なばらつき,②地下水の流線ごとに異なる,帯水層中に散在する小さな脱窒スポット内における脱窒の影響,③広範囲の濃度のばらつきが狭い流出域に収束する流れ場構造と小さい分散,④地下水が地表や井戸内へ流出する際に通過する堆積物や井戸壁における局所的な脱窒,などが挙げられた。ほかの一般水質成分にくらべ,窒素は,地中における反応場の不均質性が大きく,また,小さい反応場によりその濃度が大きく変化するという特徴をもつ。このほか,小規模な点源や不連続な流路が存在する場合には,濃度分布のばらつきは,さらに大きくなると考えられる。地中における窒素の挙動を明らかにするためにも,今後,これらの要因の影響を定量的に評価する必要がある。