著者
李 承信
巻号頁・発行日
2005

本論文は、主に大正期の<恋愛>に焦点を当てて、それを横断的に捉え直そうとした試みであり、文学テクストだけでなく、<恋愛>に関する批評的テクスト群も視野に入れて検討したものである。したがって、特定の作家個人の研究に属するものではなく、<恋愛>とはいかなるものかという、<恋愛>概念の追求や、その変遷を時間軸に沿ってたどるものでないことを前提とし、<恋愛>の成立が歴史的であり、文化的な諸条件に支えられているという視座に立っている。その意味で、本論文で行った作業は、<恋愛>表象の文化誌ともいえる。なお、<恋愛>をめぐる表象が、セクシュアリィ・ジェンダー・植民地という問題系と、どのように関わっているかを考察し、複眼的に照射しようとしたのが、本論文の特徴といえる。 ...