著者
近田 文弘 李 秉潰 吉川 佳弥乃
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.68-74, 1989-07-30

夜来香の花の構造について,特に雌蕊,雄蕊,副花冠の発生に注目して観察した。夜来香は中国南部の広東省を中心に分布しており,約10種が記載されているTelosma属のタイプ種である。夜来香は淡黄色の小花を葉腋に沢山つけるつる植物で,花には甘い香りがあり,広東省ではサラダや油炒めにして食するという。夜来香の花の形態についてはすでに著者の一人李秉滔が記載しているが,顕微鏡レベルでの固体発生は観察されていない。夜来香の雌蕊は他のガガイモ科植物と同様に二心皮性で,柱頭は大きく縦断面では台型である。胎座式は亜周辺胎座で,胚珠の数はイケマなどより多い。雄蕊先端の葯は二室性で,花粉塊はガガイモ科内では進んだ型といわれる双花粉塊となる。雌蕊と雄蕊も共に最初は指状の突起として発生を始める。副花冠は花系の背面の縦に並んだ二つの突起として発生し,花の発生の後期に急速に発達して上部が二枚に分れた弁状の副花冠となる。夜来香の花は花冠が良く発達し,副花冠や肉柱体をその花冠の中に包み込んでいるが,副花冠や肉柱体の構造は,これらが裸出しているイケマの花と同様である。