著者
松岡 千賀子
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.51-60, 2015-07-01 (Released:2017-07-28)

従来,係助詞の文体別用法に関する研究では,地・会話・心話の3文体別が大半を占め,消息は会話と同一分類に扱われることが多かった。今回,消息を会話と区別した4文体別で平安時代の18作品を調査し,「ぞ」「なむ」「こそ」の10C〜11Cにおける用法と変遷を分析した結果,(1)消息と会話の用法には違いがあること,(2)消息と心話の用法は時代が下っても一定している(消息:「なむ」の出現比率が高い,心話:「こそ」の出現比率が高い)のに対し,地と会話には変化が見られる(共に「なむ」の出現比率が減少し,地は「ぞ」,会話は「こそ」が増加する)ことが確認できた。文体差の分析は,係助詞の用法のみならず,書記言語と音声言語の相違と変遷,さらには日本語文体史を見直す糸口にもなり得ると考える。