著者
松岡 敦子
出版者
メディカルレビュー社
巻号頁・発行日
pp.37-41, 2017-04-20

メトホルミンに代表されるビグアナイド薬はスルホニル尿素薬と並び,最も古くから使用されている糖尿病治療薬である。ビグアナイド薬はフレンチライラック(ガレガソウ)に多く含有するとされるグアニジンの誘導体であるが,すでに17世紀の薬草療法ガイドブックに「フレンチライラックは糖尿病によると考えられる口渇・多尿などの症状に効果がある」との記載があり1),グアニジンに血糖降下作用があることが1918年に報告されている2)。ビグアナイド薬は1950年代より販売され,1970年代にフェンホルミン服用者に乳酸アシドーシスの発症が報告されて以来,一時,使用頻度が減少したが,1990年代に行われた大規模臨床研究によりメトホルミンの有効性と安全性が確認され3)4),再評価の機運が高まった。2008年には米国糖尿病協会と欧州糖尿病学会の共同ステートメントにおいてメトホルミンは第1選択薬に位置づけられた5)。最近,メトホルミンの作用メカニズムについて新しい知見が相次いで報告され,基礎研究の観点から注目を浴びている。また心不全患者での有効性や安全性に加え,悪性腫瘍への影響に関しても興味深い報告がある。本稿ではこのようなメトホルミンに関する最近の基礎的,臨床的な話題について概説する。「KEY WORDS」メトホルミン,作用機序,悪性腫瘍,心不全