著者
松本 大樹 木村 容子 佐藤 弘
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.325-329, 2012 (Released:2013-02-14)
参考文献数
17

更年期女性の動悸に対し,桂枝加竜骨牡蛎湯が有効であった症例は報告されているが,冷えに対する効果に言及した報告は認めない。今回動悸と冷えに対し,桂枝加竜骨牡蛎湯が速やかに奏効した症例を経験したので冷えを中心に考察を加え報告する。症例は48歳,女性。2-3年前より動悸,手足の冷えが出現し,X 年5月8日当院を初診。虚証で動悸と不眠を訴え,腹診所見の腹部動悸から,桂枝加竜骨牡蛎湯7.5g/日を投与したところ,服用2週間で動悸,手足の冷えが改善した。1年後に5g/日と減量したが,症状は落ち着いている。今回の症例では,臍上悸を伴う動悸と手足の冷えに対し,桂枝加竜骨牡蛎湯が速やかに奏効した。桂枝加竜骨牡蛎湯はのぼせを伴う上熱下寒型の冷えに限らず,のぼせの訴えがない場合でも,動悸や臍上悸などの気逆によると考えられる所見を伴う手足の冷えには,桂枝加竜骨牡蛎湯を応用できると考えられた。