- 著者
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松枝 拓生
- 出版者
- 京都大学大学院教育学研究科
- 雑誌
- 京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
- 巻号頁・発行日
- vol.64, pp.139-151, 2018-03-30
本稿はドゥルーズの著した書簡「口さがない批評家への手紙」を、その構造と提示される概念に着目し再読解する作業を通じて、概念の自律性に裏打ちされた教育の実験性を明らかにするものである。当該の書簡は従来、ドゥルーズの主観的態度としての議論忌避と傲慢さの象徴として理解され、もっぱら一面的なイメージを再確認する手段としてのみ用いられてきた。しかし、支配的な前提の再生産という観点からなされるドゥルーズの「対話」批判を踏まえれば、書簡における彼の言辞は、「対話」の構造に抵抗する「折衝」の技法の実践として積極的に評価できる。固定的意味解釈ではなく、偶然的な触発の連鎖という観点からなされる彼の概念評価を経由することで、「折衝」の技法に内在する教育像を明るみに出すことを試みる。