著者
松永 文利
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.77-82,017, 1998-01-01 (Released:2010-10-27)

この報文は, ポリサルファイド蒸解の操業経験について述べたものである。大昭和製紙本社工場鈴川では, 1996年1月にポリサルファイド製造設備を完成した。これと同時にスタートしたポリサルファイド蒸解は, パルプ歩留りと生産性の向上という大きな成果をもたらしている。ポリサルファイド蒸解の導入にあたり, 同蒸解のラボテストを実施した。パルプ歩留は, 白液蒸解を100%とすると, 針葉樹で4.5%, ユーカリで2.0%, アルダーで4.7%向上した。品質の変化としては, HUKPの比引裂強度の約4%の低下が見られた。ポリサルファイド製造システムは, 住重アールストローム社製のモキシー法を採用し, 処理流量230m3/TT (世界最大), ポリサルファイド濃度6g/l以上という計画性能を達成し, 順調に稼動している。ポリサルファイド製造装置の触媒は, 約1.5ヵ月周期で汚染による性能低下が見られるが, 酸洗により再生している。実機でのポリサルファイド蒸解の歩留は, ユーカリKPで1.2%, LUKPで4.6%向上し, パルプ品質は, 特に変化が見られていない。このほかに, 回収ボイラーの熱負荷の低下により, 工場の生産のネックとなっていた回収ボイラーの底上げを図ることができ, 約3%のパルプ増産が可能となった。