著者
松波 淳也 Matsunami Junya
出版者
法政大学大原社会問題研究所
雑誌
大原社会問題研究所雑誌 (ISSN:09129421)
巻号頁・発行日
no.580, pp.1-10, 2007-03

わが国は,循環型社会形成を目指して廃棄物管理政策の法体系を整えてきたが,あくまで法体系が想定してきたのは,いわゆる「国内」循環であり,循環資源等の国外への流出や国外からの流入を想定したものではなかった。経済のグローバル化にあいまって,製品の「動脈」物流のみならず,中古品,使用済み品,廃棄物等の「静脈」物流に関しても国際的な移動は拡大してきている。循環は国内で「閉じた」ものではなくなってきている。中古品,使用済み品,廃棄物等は潜在的に環境汚染リスクを有する。国内循環の枠組みで法体系を整備し,いかにそうしたリスクが軽減されるとしても,国内循環の枠組みを越えて,中古品,使用済み品,廃棄物等が国外に流出されてしまえば,政策的に管理困難な状況となるのは自明である。さらに,国外において,流出した中古品,使用済み品,廃棄物等が原因で環境汚染の問題が生じた場合,国際的な責任問題も発生するだろう。本稿の目的は,従来の「国内」循環型社会の概念を拡張した「国際的循環型社会」の概念を検討し,また,その「国際的循環型社会」が成立するための諸条件を明示し,さらに,政策的実現に向けた課題を整理することにある。