- 著者
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林 品彰
- 出版者
- 日本デザイン学会
- 雑誌
- デザイン学研究 (ISSN:09108173)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.1, pp.93-102, 2001-05-31 (Released:2017-07-19)
- 参考文献数
- 18
- 被引用文献数
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本研究は日本人が台湾で開催した視覚伝達デザインに関する大型行事「台湾勧業共進会」「中部台湾共進会」「高雄港勢展覧会」「商業美術展覧会」についての調査から、それらが台湾視覚伝達デザイン史上に果たした意義を考察するものである。研究の結果以下のことがわかった。(1)日本が台湾を統治していた時期、日本は台湾から多くの利益を吸収しようと台湾のインフラ整備及び産業開発を行い、台湾を現代化、資本主義化の方向へ次第に向かわせようとしていたが、本研究で取り上げた各大型行事は、こうした政策逐行の一環として行われた。(2)これらの行事から、日本統治時代の台湾ではすでに視覚伝達デザインが活発に行われていたことがわかる。(3)これら大型行事の計画及びデザインは、日本人主導によるものであったが、計画は細密、周到なものであり、デザイン表現も当時の日本国内のデザインスタイルを反映していた。(4)これらの展覧活動によると、日本は台湾での開発は政治や経済の目的だけではなく、文化的配慮あるいはデザイン発展を向上させる具体的行動もあると認められる。