著者
林 彦一
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.40, pp.165-174, 2003-03-06

テロと長引く不景気で、疲れもでてきたのか、「ゆとり」とか「無用」とかいった「悟り」めいた言葉が持て囃されているようである。(心)まずしい私にはそういう贅沢は許されず、昔ながらに、「本気」・「真剣勝負」で孤剣を引っさげて生き続けている。従って常に生死の世界を彷徨っているためか、「おんな・こども」という存在が限りなく尊く且ついとおしく思えるのだ。戦いのあとの平和、砂漠のオアシスのようなもの、と言ってもいいだろうか。 こういう私に、真剣に応えてくれる小説、いや口幅ったいが「私」を映し出したような小説が『風と共に去りぬ』であった。私の与えたタイトルは「読解」であるが、実はわたし自身をこの小説に読み取っているのである。 Gone with the Wind、まるで唸る(Wの音)のような風の吹くなか、弔鐘とも除夜の鐘とも紛う響き(ゴーン)、大衆の一員でもある私には、「大衆小説」という蔑称も気に入っている。